美術館見学で上野の国立西洋美術館へ行ってからというもの、年長組保育室には妙に芸術の香りが漂っています。
あの日の感動を振り返るように絵はがきの絵を模写する人々、写真集をめくる人々、園長に絵の解説をしてくる人々……。その中でも真剣に美術館の写真集を見つめつつ、制作を続けるA君を見つけました。彼が描いていたのは、ロダンの『地獄の門』です。しかし、よーく見るとそれをモチーフとして自分のオリジナルの作品を創作していたのです。
ある作品から着想を得て、自らの作品を制作するというのは、古今東西の芸術家たちがしてきたことです。
例えば、この19世紀に生きたフランスの彫刻家ロダンは、13世紀のイタリア・フィレンツェの詩人ダンテが書いた叙事詩『神曲』の「地獄篇」に描かれている「地獄の門」を彫刻で表現しました。そのダンテが書いた『神曲』の中に作者ダンテと共に登場するのは、紀元前1世紀の古代ローマ時代に生きた詩人ヴェルギリウスです。そのヴェルギリウスが古代ローマ建設の歴史を描いた『アエネイス』は、紀元前8世紀に生きた詩人ホメロスの作品『イリアス』が下敷きになっているといいます。
つまり、彼らにとっての古典とも言える名作から大きなヒントを得ながら、自分の作品を創作していたのです。A君がやっていたことは、これと同じことです。
さて、ロダンの『地獄の門』や『考える人』から刺激を受けたA君の作品は、一体どのようなものになるのでしょうか。とても楽しみです!
*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。