ひかりの園庭は秋の実りでいっぱい

園長 東 晴也

「どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
谷川の岸に小さな学校がありました。
教室はたった一つでしたが生徒は三年生がないだけで、あとは一年から六年までみんなありました。運動場もテニスコートのくらいでしたが、すぐうしろは栗の木のあるきれいな草の山でしたし、運動場のすみにはごぼごぼつめたい水を噴く岩穴もあったのです。
さわやかな九月一日の朝でした。……」

これは、宮澤賢治の『風の又三郎』の冒頭の一部です。当時の東北・岩手の9月のはじめには、もう強い風が吹いて、まだ熟さないくるみやかりんの実を吹き飛ばしていたのでしょう。

先週金曜の早朝、園庭に大きな黄色く熟したかりんの実が一つぼとりと落ちていました。そっと拾って、園舎にもっていき、ちょうどうさぎに青菜をあげていた年少さん達にたずねてみました。
「これは、何の実だが知ってる?」
「(首をかしげて)……。」
「のど飴になる実だよ」すると、近くにいた好奇心旺盛なKさんが、
「きんかん!」と。
「へぇー、よく知っているね!でも、ちがう。……かりん(花梨)って言うんだよ。」
ちょうど、年少さんと年中さんが先週行った羽村市動物公園でも秋の味覚、銀杏がたくさん落ちていました。「臭い」といって鼻をつまむ園児たちに、近くにいたS先生が、銀杏の木の性別について話をしていました。ひかりにも銀杏があります。柿も、栗も、くるみも、きんかんも、かりんもあります。こんなに豊かな秋の味覚を感じられる園庭で育つ子どもたちは本当に幸せです。

今は分からなくてもいずれ分かる時が来る。それが、教育の現場の真実です。「教育とは、目の前の生徒が何年後、何十年後かに、大きくに成長するための原因となることを、未来を信じて、絶え間なく提供していく業のこと」と先輩教師からかつて教えられました。
今日も、ひかりの子どもたちが、将来大きく成長していくことを信じ、そのために私ができることを精一杯努めよう。

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。