心の美しさは自分の心との戦いによってのみ得られる

園長 東 晴也

今朝のチャレンジ(冬季の体力作りのための体操と運動)の時、ひとりで園庭の地面に座り込んで泣いている年長のY君がいました。どうも縄跳びや鉄棒がうまくできなかった様子です。私が縄をもって、「ほら、やってごらん」と促しましたが、泣くばかり。

チャレンジが終わり、年長組は、「銅板(卒園証書)」制作の講師が来られて、いよいよグランド(防食剤)を塗った画面にニードルで描画する時間になりましたが、今度はテラスで立ったままワーワー泣いています。私は、側に立って、「どうしたの?」と理由を聞いたのですが、今度はより激しく、
「かまわないでください!ほっといてください!」と、叫ぶように言うではありませんか。私は、そうだよな、Y君にはY君にしか分からない事情があるよな、と側を離れて、クジャク小屋の環境整備に向かい、そこでしばらく作業をしていました。

私の作業がちょうど終わるころ、数人の年長さんたちと一緒にこちらに来るY君の姿を見つけました。さきほどとは明らかに表情が違い、穏やかないつものY君の表情に戻っていました。Y君が、私のすぐ側まで来たとき、彼は私に向かってこう言ったのです。
「えんちょうせんせー、さっきはぼくのことをしんぱいしてくれたのに、『ほっといてください!』なんて言ってすみませんでした。ゆるしてください。」
私は自分の耳を疑いました。まず、さっきまで号泣していたY君がいつもの穏やかさを取り戻していたこと。そして、知的なY君らしく、自分の気持ちを冷静に振り返って、反省し、心配していた私に謝ろうと思って、実際に私のところまで来てくれたからです。嬉しかったです。私は、別になんとも思ってないので、いつものように、
「あー、大丈夫だよ。いいよ。」と言うと、今度は、
「『いいよ』って、言ってくれてありがとうございます!」と、泣きそうなほど喜んで、私に抱きついて来たのです。Y君が私に抱きついてきたのは、今日がはじめてでした。

この一連の出来事の背景に、クラス担任K先生の配慮や促しがあったのは言うまでもありません。でも、私は、苦しいほどに泣きわめいていたY君が、落ち着いて自分を振り返って反省し、心配をかけた人に自ら謝りに行って、許しを請う勇気ある姿に感動してしまいました。こんなこと大人の私たちは出来ますか?悔しいけど、私だってなかなか出来ません!

これが「子ども」の素晴らしさではないでしょうか。子どもたちは、私たちが考える以上の速さで成長しています。だから、小さなうちにしっかりと、よく見てよく聞いて、育てる、育ち合うことが大切なのです。
「心の美しさは、自分の心との戦いによってのみ得られる」。これは渡辺和子さんの言葉です。今日のY君の姿から、自分の心としっかり戦った後の美しさと清々しさを、私は感じましたよ。Y君、本当にありがとう!

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。