私の居場所

園長 東 晴也

「土地もある 家もあるのに 居場所なし」
これは、2001年に入賞したサラリーマン川柳(某保険会社の企画、名称は当時)です。受賞者の悲哀?!が痛いほど伝わってきますね!

人には誰にでも「居場所」が必要です。特に、子どもにはそうですよね。我が子がまだ小さかった頃、自宅で急ぎの仕事をしていて、絡みつく子どもに「あっち行ってて!」と、手の甲で軽く押し出しただけで、子どもは泣きそうになり、かえってしがみついて来たことが何度もありました。

今日の親子登園日で、お父(母)様たちが子どもたちを一様に膝の上で抱っこしている姿を見たとき、私の心のなかに温かいものを感じました。この子どもたちには確かに居場所があると思ったのです。「居場所がある」ということは、「帰る所がある」ということです。

子どもたちは、やがて自立し、旅立っていきます。私の2人の子どもは、ふたりとも高校入学と同時に、寮生活をすることになり、山形の僻地にある自宅を出ました。そして高校卒業と同時に、東京の大学に進学し、そのまま都内の会社に入社し、今に至っています。私が息子たちと自宅で一緒に生活したのは、わずか15年間でした。幼稚園を卒園するのは6才です。一緒に生活できるのは、あとわずか9年間しかない、かもしれません。

子どもたちは、帰る所(居場所)があるからこそ、出て行くことができます。家族以外の世界との出会い、つまり多様な価値観との出会いを促すには、まず「私たち(の家)が安全な居場所になること」です。そうしてはじめて、我が子は自分の世界を広げるために、旅立つことができるのです。
そのときが来るまで、自分の居場所をしっかり味わってほしい!「そこがあなたの居場所だよ」と、心のなかで呟いた園長でした。

(2024.2.10)

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。