小さなことを喜び感謝できる人に -みんなで食べる日-

園長 東 晴也

本園には、「みんなで食べる日」という変わった名前の行事があります。もちろん、毎日、みんなでお弁当を食べているのですが、今日は特別に保護者様の有志4名が来てくださり、お昼のために特別メニューを調理して下さいました!

特別メニューとは、一口ステーキ、ハンバーグ、エビフライ、スパゲッティ、ショートケーキ……などではありません。今日のメニューは、五分づき米の茶色いご飯、たくあん、煎った煮干し、蒸かしいも、デザートがバナナ3分の1、以上です。これをみんなが「おいしい、おいしい」と言って食べるのですから、どんな魔法にかけられたの?って、思いますよね。年長のR君は、私に、
「えんちょーせんせー、今日、ぼく何ばいおかわりしたとおもうー?」
「えー?3杯くらい?」
「5はいだよー」と、胸を張っていました!

この行事が始まった経緯は、昔、ある園児がお弁当のフタを開けた途端に、「こんなもん食えるかー」と叫んだことから、食べ物や親への感謝ができるようにとの思いで企画されたようです。

以前、日野原重明(キリスト者、医師、2017年没)先生の講演で忘れられないエピソードがあります。
「今、私たちは感謝をすることが出来なくなっている。戦後の貧しかった時、私は都内の大使館駐在員の訪問診察をした際に、『先生、どうぞ』と、その奥様に言われ、コーヒーと一緒に大きな角砂糖が3つもカップの横に置かれていた。当時、日本はどこも食べ物がなくて食料は配給でしたし、私は角砂糖を3つもコーヒーの中に入れて飲むなんて、とてもそんな贅沢は出来なかった。それで、1つだけ入れて、あとの2つはこっそりハンカチに包んで持って帰って、家族6人でその2つの角砂糖を分けて食べた。家族6人で2つの角砂糖を分けて、『おいしいね』と言って食べたんです。今、日本は大変豊になったけれども、このような小さなことを感謝することができなくなっている」と、こんな内容でした。

「みんなで食べる」とご飯は美味しくなる。そして、質素なご飯も、ごちそうのように感じられる。小さなこと、ごはんにたくあんと煮干しがあることが喜びと感じられる感性は、とても素敵ですし、逞しい生きる力につながると思った今日のみんなで食べる日でした。(2024.6.21)

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。