上野の国立西洋美術館に行ってきました!

園長 東 晴也

 「幼稚園児が上野の国立西洋美術館へ行く」って、どういうことでしょうか?

 国立西洋美術館の常設展の作品紹介を一度、HPでご覧になるとその難しさが分かります。ルネサンス期以降の誰もが知る有名な絵画はほとんどありません。来場者のほとんどは30代以降の渋い壮年層です。その中で、青い園服と黄色い帽子の園児は、異彩を放っていました。

 芸術はよく理解できなくても、今日確かに彼らは本物を見て、何かを感じたはずです。観覧の最後に立ち寄ったミュージアムショップでは、全員が自分の欲しいと思った2枚の絵葉書を買いました。ポケモンのTシャツをほしいというのではありません。幼稚園児がモネとルノワールの絵葉書を買うために、国立西洋美術館の1階のショップの列に並んでいるんですよ!これは、もうエリート教育?!です。

 今は分からないかもしれない、でもいずれ分かる日が来る。これが教育の業の特徴です。年長さんは、今日自分が選んで買った絵葉書をおそらく大事にとっておくでしょう。中高生になって、美術の教科書を開く時に、モネという画家と再会するでしょう。その時、幼稚園時代の体験を思い出し、自らモネを調べ、印象派の美しさに出会うかもしれません。19世紀の絵画が、国境と言語と時代を越えて、21世紀に生きる自分がその絵葉書を買った体験に思いを巡らすかもしれません。そこから、美術や歴史の道に進む人もいるかもしれませんね。

  ロダンの『考える人』(美術館の玄関にある大きな彫刻)のモチーフが、イタリア・ローマにあるシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画『天地創造』にある『預言者エレミヤ』との説を知り、聖書のエレミヤ書を読んだり、ローマまでオリジナルを観に行ったりする人があるかもしれませんね。ヨーロッパの芸術のほとんどは、キリスト教に関係していることがわかり、宗教学やキリスト教を学ぶ人があるかもしれません……。私の想像はふくらむばかりです。

 本物(一流)の絵を観よう。本物の音楽を聴こう。本物の芸術に触れよう。人は、触れるものに似ます。本物に触れることで、目や耳が洗練され、いつの日か、今日のくじゃく組のみんなが、洗練された人間性豊かなかっこいい大人に成長されますように。

 帰りの智光山公園の駐車場で、Rさんが“I like Monet. (モネが好き)”と連呼していたことがとっても嬉しかったです。どうもありがとう!

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。