薪ストーブ一年ぶりに点火!「人権」と「公共の福祉」

園長 東 晴也

薪ストーブ

約1年ぶりに「あひるの家」の薪ストーブに火が入りました。ストーブを使えなくなった理由は、ご近所の方からの強い要望(クレーム)があったから、と聞いています。(*私が赴任する前のことなので詳細は知りません。)つまり、この約1年間、幼稚園はご近所の方のお気持ちを尊重し、使用を控えてきました。そのご近所の方のお気持ちとは、おそらく止むに止まれぬほどのものがおありだったのだろうと推察いたします。

しかし、一方で、幼稚園としてはぜひ使いたいのです。(理由は11月22日付けの「園長!」の写真日記で述べたとおりです。)……その双方の思いを調整するのが難しいのです。

まず、双方が率直な意見を述べ合い、同意(妥協)できる落とし所をみつけ、合意する。その際に大切だと思うのは、「私が間違っているかもしれない」という謙虚さをもつことと話し合いを経て自分の意見を変える覚悟があるということの2点だと思うのです。それがあってはじめて、話し合いは成立すると思うのです。「俺の意見は絶対変えない」という姿勢では、戦争は停戦できないままです。互いに少しずつ、妥協・我慢することが肝要ではないでしょうか。

私は、以前このエッセイのページで、私の意見を公にすることで批判に身をさらしてみました。もし、園長としての私が、この件で「暴走」していたとしたら、どなたかが優しくたしなめてくれるはずと思ったからです。そして、さらに本件について、公の立場で意見をおもちであろう方々に、ご意見を求め、私の主張が間違っているかを聞いてみました。まず、地域のことなので鵜の木自治会の会長さん、暮らしのことなので行政の狭山市環境経済部環境課、火と煙のことなので狭山消防署予防室、そして狭山警察署生活安全課、地元の市議会議員にも相談し、意見を求めました。そのどなたからも「幼稚園は薪ストーブを使用すべきではない」とのご意見はありませんでした。「市販の薪ストーブを屋内で使用するなら消防が規制するものではない」「予め使用日時を周囲に周知されているのは近隣に十分配慮していると言える」などです。ただ、臭いや煙に敏感な方もいらっしゃるので、そのような声をこれからも丁寧にお聞きしていきたいと思っています。

12月4日午前9時、約一年ぶりに薪ストーブを焚いて、心地良い薪のはぜる音と柔らかい温かさが全身に伝わってきました。すぐに、ひかり会のHさんが立ち寄って下さり、声をかけて下さいました。

日本国憲法には、12条以降「公共の福祉」という言葉がたびたび登場します。日本国憲法は、「個人の尊重」つまり「基本的人権」を尊重しますが、人権は無制限に保障されるものではなく、「公共の福祉」により制限できると定められています。
ですから、0か100ではなく、お互いが少しずつ我慢し、他を尊重する姿勢が大切で、自分だけではなく、みんなの幸せを考えて生きていきたいですし、園児の皆さんにもそのようなバランス感覚を持ち合わせて成長していってほしいと願っています。(2023.12.4)

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。