4月28日(日)朝までの数日間、碁石チャボのお母さん(一部園児からは「パーちゃん」と呼ばれています)は卵を温めていました。その日の朝も私はいつものように、鶏やウサギの餌と水を替えて、夕方まで園から離れていました。そして、いつものように、鶏やウサギを小屋に入れるために園に戻り、ピーターやチャーリーを園舎に入れ、ホール脇のゲージにいるパーちゃんの様子を見に行った時のことです。明らかにパニックになり、卵を温めずにゲージの中で行ったり来たりしているパーちゃんを見つけました。パーちゃんの様子が明らかに変です。温めていたはずの卵は、全てなくなっています。パーちゃんの口が砕けていて、口元から胸にかけて、体液でべったり濡れています。
「えっ!?何があったんだ?」
私がパーちゃんの口元をよく見ると、どうも下のくちばしが脱落して、はがれた皮膚と一緒に垂れ下がっています。犯人は、カギのかかったゲージの隙間から侵入し、雌鶏の頭部だけを襲撃した後、卵を盗んで、逃走したようなのです。*推測です。
私はパーちゃんのその様子を見て、もう長くはないだろうなと直感しました。ゲージから出たがっていたので、他の碁石チャボたちと一緒にして、餌と水をあげました。でも、餌を突くだけで、喉には入りません。GW中も、何度か鶏の大好きな犬用のおやつを砕いて差し出しても食べられません。
そして昨日、先生方に事情を報告しました。園児とくに年長さんたちは、チャボが卵を温めなくなったことを心配している様子でした。
夕方、E先生が、私のところに飛んできて、目を丸くしてこう言うのです。
「先生、パーちゃんを病院に連れて行きましょう。今ならまだ間に合います!」
こういうときのE先生は本気です。私は、クジャクのピーちゃんの時のように、先生方の熱意に押し出されるように雨の中、パーちゃんを小さな段ボールに入れて、市内の動物病院に向かいました。
獣医師は「ほー、なるほどー。これは残っているな……」などと呟きながら、3人の助手?!の方にチャボを押さえつけさせ、動物用瞬間接着剤で入念に下クチバシを下顎の骨に差し込んで固定してくれました。そして、千切れた口周りの赤い肉片(肉垂というそうです)を、(麻酔なしで)縫合してくれました。その手さばきたるや神業のよう!先生の緊急手術によって、パーちゃんの顔はみるみる元の顔の形に戻って行きました!
チャボが襲われた直後の衝撃的な姿から、その「死」を予想した私でしたが、E先生の熱意や動物病院の先生の熟練の業によって、今日のパーちゃんは、昨日より随分、とさかの血色が良いように見えます。E先生が、医師の指示通り、鳥の餌をおかゆにしてくれました。ゲージを覗き込んでいる私に、何人もの子どもたちが心配そうに様子を聞いてきます。
パーちゃんが懸命に生きる姿とそれを心配する子どもたち。命が響き合っている。そのことを今日は強く感じました。連休明けに再度通院です。 (2024.5.2)
*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。